段戸川C&R区間が出来るまで その4
--
さて、いよいよC&R区間を作れることになった。
作るにあたり、何を考えていたかというと
- 漁協だけで運営するのではなく、釣り人や企業も協力して運営するモデルとすること
- 全く新しいエリアに作ること
--
1点目について、その1でも書いたように魚影が濃いC&R区間が一時的に作れたとしても、多くの漁協で早朝や夕暮れ時まで監視をすることが難しい状況で、名倉川漁協も例外ではない。
じゃあ、どうする?と考えた時に、良識ある釣り人である。
私自身で考えても、もし素晴らしいエリアで釣っていて、横にキープ目的の密漁者がくると非常に嫌である。
漁協も釣り人も良いエリアをきちんとしたルールで守りたいという思いは一致する。
釣り人であれば、早朝から夕暮れまで自分も釣りをするので、釣りをしながら密漁者がいないかを監視することはそう難しくない。
仮に1人の釣り人が月に1回段戸川に行くだけでも、3月から9月の7カ月間で7回の監視の目を作ることが出来る。
これが20人でもいれば、のべ140回/年の監視になる。
このような監視を、漁協が正式に釣り人にお願いして組織化した仕組みが「段戸川倶楽部」である。
今シーズンは人数増えすぎても運営が困難になるため5月で募集を停止したが、27人の釣り人が協力してくれ、シーズン終了後のアンケートから少なくとも123回の監視が出来たことがわかった(おそらくもっと多い)。
運営の仕組みさえ整えれば、こういった良識ある釣り人の皆さんは実は多いと思う。他の漁協でも真似すれば、漁協だけで困難な監視でも十分できるように思う。
# なお、段戸川倶楽部の立ち上げや運営は、テンカラ大王 石垣先生はじめ、テンカラコミュニティの方々に強力にサポートして頂きました。いつも感謝してばかりですが、改めて、ありがとうございました!
企業連携の方も進んでいるのだが、2019年10月24日現在、まだ情報公開出来ておらず、もう数週間でアップできそうである。いずれにせよ、企業も今の状況を何とかしたいという思いは同じで、良いC&R区間や仕組みを作ることに強く興味を持ってくれているし、協力してくれるとこが多いと感じる。
このように段戸川C&R区間では、設立前から釣り人や企業を巻き込んで運営することを前提で考えていて、このモデルであれば漁協単独できっちり監視出来ない場合にもきちんと運営出来るため、是非他の漁協にも広がってほしい。
そのためのモデルでもあるので、おそらく来年3月くらいには段戸川倶楽部の全運営方法資料も公開する予定だ。良い川が全国に出来てほしい。
--
次に2点目、「全く新しいエリアに作る」ということ。
もともと、段戸川は国道153号線より上流が人気のあるエリアで、多くの釣り人が入っている。
153号より下流は、ほとんど人が入っておらず、魚影も薄いためにやや忘れ去られた感のあるエリアだった。
ただし、今回は最初からこちらに作りたかった。意図として、「今まで0だった場所なので明確に結果がわかる(魚影、人の数)」「既存の釣り人と争いをさける」ためである。
この下流エリアで問題になるのが「はたしてこのエリアは渓流魚が棲息できるのか?水温や餌の問題で、元々棲息しにくい場所なのでは?」ということだ。
これに対して、またも石垣先生はじめ昔このエリアで釣ったことのある人達からの情報を参考にさせて頂いた。
石垣先生曰く「40年前でしょうか、よくこの153号から下部に入っていて、林道沿いを下り、釣り上がってきていました。綺麗なアマゴがよく出たものです」ということ。
段戸川付近の環境を考えると、開発もされていないし、森林の様子も昔と大差ないため、発眼卵放流などで一度増やしてしまいさえすれば、十分にアマゴが棲息できる環境だと判断出来た。
まだまだ課題はあるものの、2年前に潜った時にはほぼカワムツしかいなかったが、先日潜った時には発眼卵放流から成長したアマゴをたくさん見ることが出来た。
これからもボディブローのように発眼卵放流を続け、足りない分はカンフル剤として成魚放流を実施する。ちなみにこの放流活動も漁協だけでなく段戸川倶楽部の皆さんに協力してもらっている。
新しいエリアに作ることで、元々0だったアマゴと釣り人がどれだけ増えたかが明確にわかるし、元々キープ目的で釣りをしていた人は上流に行き、C&Rに来たい人だけが下流に来るというすみわけが可能になる。
と、今回ようやく過去から現在にたどりついたのだが、このように書いてみたものの実際に自分がやっていることは種火おこしにすぎない。
漁協、社内や社外、たくさんの方々が協力してくれて今があるし、今後動きが更に大きくなればなおさらである。
皆様、ありがとうございます!
その5に続く。