段戸川C&R区間が出来るまで その1

段戸川C&R区間がオープンして1シーズンが経過しました。

来年以降、更に魚影も濃くなるだろうし、danboもあるんで利用しやすくもなると思います。

 

区切りとして、作るにいたった背景や思いなどを残しておこうかと。

かなり長くなるので、5回くらいに分けて書きます。

 

【背景①】

さかのぼること5年くらい前だろうか。

テンカラを始めたころの僕は、某河川でなかなか釣ることが出来ず、「うーん、これだけ渓相は良いのに、何でこんなに釣れないんだろう」と自分の腕は棚にあげて、「日本の川って魚がいなすぎじゃない?」と素直に考えていた。

 

更に4年前、つりチケをリリースする前後、各漁協の話を聞いていくと、改めて「制度と実態が強く矛盾してるなー、これは」と強く感じた。

制度的に日本では、漁協は漁業法の規定により第5種共同漁業権の免許をうけ、アマゴなどの対象魚種について増殖義務が課せられている。

 

このため、多くの釣り人は「昔はもっと魚がいた。自分達は遊漁料を払っているのだから、漁協はもっと釣れるよう川の管理をしてほしい」と考えているはずだ。

 

一方の実態。

昔は漁協に人も時間もあったが、現在はどうだろう。地域は過疎化である。地域に動ける人はおらず、漁協活動どころではない。多くのダムや堰堤が作られ、河川環境も悪化しており、魚も増えにくい状況だ。

これもよく理解されていない点だと思うが、海面と違い内水面では漁協組合員は本職ではない。多くの組合員は他に生活を支えるための本職があり、その時間の合間、土日等に漁協活動をおこなっている。

この状況の中で、広大な管轄河川に対して、増殖義務を満足に果たすことは相当に難しい

 

余談だが、とある解散を考えている漁協の話では「県に解散をしたいと伝えるとはぐらかされる、頑張れと言われても今の状況では難しいのに、補助金等の支援はしてくれない。どうすればいいんだ」といった感じで、漁協としても制度と実態があわない状態でどうすればいいのか困っている組織が多い。

 

1901年の明治漁業法で江戸時代からの慣例を法制化し、その流れを概ねたどる形で1949年の新漁業法が制定されている(GHQと水産当局のやりとりは長いやりとりはあれど)。

日本ではその新漁業法の中で地域の漁業協同組合に漁業権の免許と増殖義務が与えられたが、資源管理を徹底するという世界の潮流や現在の内水面状況から考えると、アメリカのように各州にあるゲーム&フィッシュという公務員組織がになってもよいはずである。

もしくは、公共性の高い地元企業でも良いはず。

 

今後の過渡期で理想的なのは選択制で、今のまま増殖義務を果たせるだけの力がある漁協は是非そのまま運営してもらい、昨今多い解散をせまられている漁協エリアは、他組織の参入が出来る形が良い。

 

とはいえ、簡単に漁業法が変わるとは考えにくいので、段戸川C&R区間の取り組みにつながっていくのだが、この話はまた後で。

 

【背景②】

制度的に、漁協は1948年の水産業協同組合法により規定されている。

その漁協に、漁業法により第5種共同漁業権の免許が与えられるという格好だ。

「協働組合」という名前の通り、法律上の目的は「釣り人に快適な釣り場を提供する」ことでもないし、「ヒレピンの美しい魚を提供する」ことでもなく、実は「漁業者の経済的社会的地位の向上と漁業生産力の増進を図るための、漁業者の協同組織」である。

簡単に言うと「組合員がよりよく生きることを相互に助け合う組織」である。

 

水協法が制定された背景として、戦前は羽織漁師と呼ばれるような実際には漁業をしない人々が既得権益を所有し、本当に働いている漁民はあやつり人形となっているような支配階層が存在した。

これを打破するために水協法では、一部支配層による漁民団体の搾取を打破することを狙って制定されている。

このような制定当時の時代背景を考えれば、水協法の内容はとても納得がいく。

漁民支配の仕組みを打破し、本当に漁業をしている人に機会を与えるための仕組み作りだったのだ。

 

こうして水協法により、漁協は "組合員のための組織" と法制度上規定されており、外部の釣り人云々は関係ないのである。法制度同様に考える自分達のことを考える漁協も多いが、法制度成立の過程から考えても、実はそれが正しいのだ。

 

一方で実態としては、「漁協組合員は自分達のことしか考えていない」という釣り人から多い意見でわかるように、世間一般からは[釣り人によい釣り場を提供する"サービス業" ]が求められている。

 

法制度としては、自分達の生活向上のための組織と位置付けられているのに、時代が変わり、サービス業としての漁協が外からは求められている。

これも制度矛盾。本来なら大元の制度、法律を変えた方が良い。

しかし、法律は簡単には変わらないだろう。

 

-----

じゃあ、このような制度矛盾が存在する中でどうするのか?と考えたい。

制度矛盾とはあるとはいえ、日本の川と魚はやはり素晴らしいと思う。

こんな状態でも、美しい魚が釣れる。

f:id:satsukitjp:20191027061758j:plain

f:id:satsukitjp:20191027061909j:plain

f:id:satsukitjp:20191027061940j:plain

f:id:satsukitjp:20191027062013j:plain

 

 

きちんと管理出来れば、相当に魚が増えるポテンシャルがあり、景観も海外ではあり得ない美しさの川ばかり。

自分もテンカラも友釣りも大好きだし、何とかしたいと強く思う。

 

そこで、自分達が漁協を作り、ポテンシャルを最大限に活かしたエリアのモデルを作ろうと考えたのだ。

 

最初から実態にあうように法制度を変えることは無理でも、少しずつ事例を積み重ねていき、しかるべきタイミングで法制度を変えるというステップだ。

 

その2に続く。